16.10.12

Dance Triennale Tokyo 2012



"コンテンポラリーダンス"
誕生して30年という、まだ若いアートの祭典に行って参りました。
今年5回目を迎えるイベント。私は初めての参加だったのですが流石「コンテンポラリーダンスの敷居をもっとカジュアルなものに!」というテーマだけあって、様々なプログラムで現代舞踊に触れる機会を約2週間に渡ってつくってくれています。

今回は2日間のワークショップの体験と、アジアにフォーカスしたアーティストの舞台を鑑賞。

先ず、私が申しこんだのはブラジル発のダンスカンパニー"リア・ロドリゲス"のWS。彼等の舞台を鑑賞するどころか実はプログラムを見るまで、名前すら知りませんでした。しかし私の友人がカンパニーを何となく知っていたのと、YouTubeに挙がっていた彼等の作品を観て、本能的な表現が目に留まって参加を決意しました。


YouTube【KYOTO EXPERIMENT 2012 公式プログラム紹介】
リア・ロドリゲス『POROROCA』
Lia Rodorigues "POROROCA"より

キャリアに7年ほどギャップが出来ていた私は(昔モダンバレエを習っていた)現役バリバリのダンサーやコレオグラファーに囲まれて、少々じゃなく、かなり緊張気味でした(笑)アップだけはしっかりやっておこうと思って、関係者の方よりも早く会場に着いてしまう… レッスンは青山劇場のリハーサル室を使ってスタート。

てっきり2日間のWSだから振り付けが出来あがっていて、テクニックなどを習得するのかと構えていたんです。しかし出始めはカンパニー代表・リアさんを中心としたカンヴァセーションから始まり、「ブラジルに対してどんなイメージを抱いている?」と参加者ひとりひとりの意見を訊きながらカンパニーの歴史を教えてくださいました。そして彼女曰く、「この対話は既に身体を使っているからクリエーション(身体表現=ダンス)の始まりなのよ」と。そのまま1時間あまり、英語とブラジル語と日本語がフロアを飛び交います。

そうして今度は「もっと感覚的なことを」ということで、踊るときに彼等がどのような"精神状態"にもっていくのかを学びます。リノリウムに寝っ転がって(久々のゴム製の床の冷たさが気持ちよかった)目をつぶって、空間に自分をどうおくか?他のダンサーとどのような関係をその空間で結ぶか?ということを意識させます。中には「これは儀式?」と思わせるような動きもあって、あっと言う間に身体は日常の緊張から解放されて温まる。ちょっと瞑想している様な気分です。

2日目。今度はもっと踏みこんで、身体を大きく使った動きがメインとなります。円になって、ひとり中央に行き単純な動きを繰り返す、それをまた別な誰かが真似をしながら別な振り付けに変えて行く。そのループを繰り返す。伝言ゲームのような感じです、同じことをやっている筈なのに最初と最後では辻褄が合わない(しかし今回はそれを意図的に)途中から全員が動き出して、ひとつの動作に落ちつくまで続ける。なかなか言葉で説明するのは難しいです…

"Infection"と"Discovery"の連続だなぁ〜と私は感じて、リアさんも「そこから自分が普段では意識できない動きを発見する」そうして守りにはいらない発想を軸に新しい作品ができあがるのだと。11人のメンバーを持つ貴重なカンパニーの制作背景が脳に浮かびました。そして何よりノビノビと身体を動かせたことへの感動。貴重な体験にとても感謝しています。

鑑賞した舞台で触れておきたいのは韓国のチェ・チンハンの作品「"I want you to be happy"」…ひとことで言うと、引きこまれました。観ている私としては彼が踊っているという事実が代替となって"語り"になんの意識や違和感もなく変換されていたことです。私は踊りを観に来たのではなく、彼の話を聞きに来た、という感覚でした。不思議です。終盤は悲しいのやら切ないのやら、そんな気持ちでスパイラルホールを後にして。地下鉄に乗って「ああ、私はあの場で彼と会話をしたんだ!」と。

ダンストリエンナーレのパンフレットの前書きにあるように「混沌の中から身体で探し求める本質、無限を垣間見た際に感じる、言葉にならない深い衝撃を獲得するような"限りなき瞬間"」に立ち会えました。表現者、鑑賞者、隔たり無く人々と艶やかな時間を共有できる劇場という空間が私にはとても愛おしいです。

余談ですがWSの時にスタジオにいらっしゃっていたJOUさんと、少しお話することができました。R Dance時代に有馬先生の発表会で同じ舞台に立てたこと。記憶を共有できてとても光栄でした。

julia